「星の王子ニューヨークへ行く」

nisi6hiroyuki2009-10-10

何故か突然この映画のことを思い出した。コメディ映画好きの人ならばそこそこ知名度の高い作品だと思うのだが、恵比寿ガーデンシネマに通ってそうな、インテリ度数の高い映画マニアには見向きもされない映画なんだろうね。
1988年アメリカ映画で、主演はエディー・マーフィー。エディー・マーフィーは、現在も一応ハリウッドのトップスターの部類に入る人なんだろうけど、ちょっと「イタイ感」がある俳優というか、同じ黒人トップスターのデンゼル・ワシントンとか、サミュエル・L・ジャクソンみたいにアクターとして高い評価を得るタイプではなく(元来コメディアン出身なので仕方ないが)、しかも近年の彼の主演作は興行成績も芳しくなく、いずれB級作品専門に移行するんじゃないかと、ちょっと心配ではある。
星の王子ニューヨークへ行く」は、エディー・マーフィーが最も脂の乗っていた時代の名作(だと自分は思うのだが)で、ストーリー展開は予定調和的な面もあるけれど、裏を返せばわかり易いストーリーということなので、エディー独特の笑いの世界に意識を集中出来るし、意外な設定だが基本は純情ラブストーリーで、その面でも良く出来た映画だと思う。
自分の記憶では結構良質な映画だと記憶してるが、いかんせん十数年前にレンタルで1回だけ見たっきりで、近頃急に「そう言えば『星の王子ニューヨークへ行く』ってイイ映画だったなあ」と思い出しただけで、大雑把な事柄しか記憶していない。メモリ不足を承知の上で書き連ねます。
主人公のエディー・マーフィーはアフリカのさる王国の王子で(名前はアキーム)、金襴豪華な大露天風呂みたいな浴場に入浴する際には「喜び組」みたいな美女軍団が取り囲んで、本人はダラーンとしているだけで体を洗うのは全部美女軍団がやってくれるという、超ゴージャスな毎日を過ごしていた。そんな王子も嫁をもらう年頃になったので、父の国王が然るべき相手を探してやろうとするのだがアキーム王子は「結婚相手くらい自分の力で見つける!」と宣言して何故かアメリカNYに家来1人(アーセニオ・ホール)だけを連れて旅立つ。そして身分を隠してスラム街で生活を始めるのだが、とにかく庶民の生活を経験するのが楽しいアキームは、近所のハンバーガーショップでアルバイトをするのだが、このハンバーガーショップ、店名は「マクドーウェル」と言い、店のロゴマークは「M」の黄色文字で、「マクドナルド」と微妙に違う風なデザイン。当然地元では物議をかもしているが店主は「ウチのほうがマクドナルドより先に始めたんだ、文句あるか!」というスタンス。しかしメニューはビックマックもどきやマックフライドポテトもどき等々完全に訴訟問題レベルな品揃えです。
で、この店主、ジョン・エイモスという俳優なんだけど1度観たら忘れられない顔立ちで「50万年前の人類」みたいな風貌。言い忘れたけどこの映画はほぼ全員黒人キャストです。ジョン・エイモスは「ダイハード2」ではブルース・ウィリスを助けると見せかけて実は敵の一味だったという特殊部隊指揮官役でも印象的でした。さて、このマクドーウェルさんの娘にアキームは一目ぼれしてしまい、本題の恋愛話がスタートするのだが、ダリルというライバルが登場。このダリルもイイ味だしてるんだよねー。この時代の典型的イケメン黒人の設定なんだと思うのだが、昔のライオネル・リッチーみたいな髪型&ファッションで決めていて、仕事は、劇中バカ売れ商品の設定の黒人向け整髪料のCMモデルをしていて、この整髪料のCMがまたリアルなんだけどエディー流にバカっぽくデフォルメされていて面白過ぎ!しかもこのCMが劇中しつこいくらい何度も流されるので楽しい。
ハンバーガーショップマクドーウェル」の近所の床屋でのくだらないダベリというのが、本筋と無関係なシーンとして挿入されているが、ここでエディー・マーフィー映画のお約束、「登場人物が実は全部エディー・マーフィー」を楽しめる。
アキームの身の回りの世話役兼監視役のアーセニオ・ホール(役名忘れた)は、新天地NYで破目を外し過ぎて、国許にテキトーな報告ばかりよこす為、不審に思った国王が自らNYに乗り込むシーンが圧巻。滞在先の「ウォルドルフ=アストリア」という世界最高級ホテルに、大名行列並みの車列で乗りつけ、降ろされる荷物は全部ヴィトンのでかいスーツケースで、ぞろぞろと何十メートルも続き、リムジンから降り立った国王夫妻の前には勝手にレッドカーペットがドーンと敷かれて、露払い役の家来達が国王夫妻の歩く前方に大量の花びらを降らせて道を清めるという、公道上だろうがお構いなし、何故なら王様だから。という強引な論理をニューヨークのど真ん中で展開していた。この国王役の俳優はジェームズ・アール・ジョーンズといって、見た目は中尾彬そっくり。黒人俳優としては結構大物でいろいろ出演作があるのだが、最も高名な仕事は「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーの声をアテているのがこの人なんです。
その後のストーリー展開は純情ラブストーリーモードに突入するので語る気はないが、コメディ一辺倒ではなく、しかしコメディ濃度も高いこの映画は自分的にはポイント高いです。ただしエディー・マーフィー独特の笑いの感覚がダメな人にはオススメ出来ないです。