旧日本海軍(その3)

話の方向が、戦艦のほうに特化して来ているが、気の向くまま書き連ねます。
列強各国の戦艦(特にワシントン軍縮条約期限切れ以降の新型艦)を比較すると、その外観にそれぞれのお国柄が出ている気がしてならない。

アメリ

いわゆる旧式戦艦は、アメリカ独特の籠マストとずんぐりした艦型が特徴的だったが、ノースカロライナ級以降の新戦艦は非常に近代的なスタイルになり、表現が難しいが「ビジネスライクな」もしくは「事務的な」(同じか)外観になっている感じがする。これはシャーマン戦車とか当時の米軍の兵器全般に言える傾向で、自分の個人的考えでは「強そうに見える」というのは兵器として重要なファクターだと考えるのだが、アメリカ人の兵器に対する発想法は「見た目よりもとにかく物量第一で、性能はそこそこでいいから使い勝手と生産性を重要視する」ということか。

イギリス

世界中に植民地を持っている都合上、遠方派遣の見地から居住性をかなり重視していて、ネルソン級以降は艦橋が容量の大きい箱型構造になり、キングジョージ5世級に至っては、艦橋だけ見るとまるで商船のよう。但し兵装面では4連装砲塔の採用や、主砲の前方集中を世界初で取り入れるなど、デザイン的には「強そう感」はビシビシ伝わる。

イタリア

さすがスーパーカーの総本山の国だけあって、とにかく「速そう」。旧式のコンテ・ディ・カブール級は、近代化改装の際、機関を全とっかえして高速戦艦に変身。新型のヴィットリオ・ベネト級共々外観は殆ど巡洋艦のような軽快さがある。

フランス

新式のダンケルク級以降の外観はとにかく「エレガント」。リシュリュー級はドイツのビスマルク級と互角な実力を持ちながら、見た目はなんだか「鋼鉄の城」というより「シャトー(貴族の館)」という感じ。艦橋はディズニーランドのシンデレラ城に似ている。

ドイツ

ラテン民族のフランス・イタリアとは正反対にゲルマン民族らしく、とにかく戦闘的な容姿で、遊び心は皆無である。そしてメルセデス・ベンツの上級車種を思わせる有無を言わせぬ威圧感&重厚感があり、これもお国柄が良く出ていると思う。
一応『旧日本海軍』というお題なので、最後に

日本

上記各国それぞれ特徴があるが、日本戦艦の場合はこれら欧米諸国と隔絶された独自性があると思う。特にやっぱ艦橋部分が独特かな。各国戦艦の艦橋を強引に一言で表すなら、フランス戦艦=「シャトー」、イタリア戦艦=「スポーツカー」、アメリカ戦艦=「空港の管制塔」、ドイツ戦艦=「要塞」、イギリス戦艦=「近代的ビルディング」となり、日本戦艦は「天守閣」もしくは「五重塔」なんですな。どうにも和風な雰囲気は拭いきれない訳で、当時の海外の評論では、この独特な外観の日本戦艦の艦橋は「パゴタ・マスト(仏塔艦橋)」と呼ばれていたそうだ。また、大和型以前の旧式艦では副砲が舷側にずらりと並べられているのだが、これも何か「お城の塀に規則的に空けられた火縄銃の銃眼」を連想させる。しかしだからといって別に和風を否定している訳ではない。これはこれで「強そう」に見えるのである。日本戦艦は旧式艦でも艦体が大きく、意外だが結構重厚感がある。その上に高層に積み重ねられたパゴタ・マストが鎮座しており、他の上部構造もかなりゴチャゴチャしていて、これって当時の日本のデザイン力および技術力の限界を示してもいるのだが(逆に米英の新型戦艦の上部構造はスッキリとスマートにまとめられている)、この雑然とした感じが、突飛ながらスター・ウォーズの「スター・デストロイヤー」の『不必要なまでの細かい作りこみを施された外観』とダブってイイんですよ。(続く)