どんな音楽聞いてるのか(シーズン1 その6)

nisi6hiroyuki2008-01-13

昨年11月末に引越しをした。引越しで何がヤバイかと言うと自分の私物を荷造りする時。例えば死蔵していた過去のコレクションなどが「オイ何年振りの再会だよ!」という具合に現れて、懐かしい物思いに耽ったり、あるいは音楽CDをダンボールに箱詰めする際は、「自分の中での優先度」というのがあって、引越し先でダンボールから取り出す際にその決められた順番に取り出せるように知恵を絞って配列したり、中でも一番危険なのは「本」。荷造りしながらも絶対本は読み出してしまう。もうこうなると時間は際限なく進んでいくのです。
でもってその時火がついてしまったのが、コレ。

レコード・コレクターズ増刊 Soul&Funk」である。奥付を見たら1993年10月25日発行とあり、もう14年も前になるんだなあ。当時はPファンクにハマリ出した頃だったのでこれを買ったのだろう。表紙の人物(向かって左バーニー・ウォーレル、真ん中ジョージ・クリントン、右ブーツィー・コリンズ)を見ただけで即買いした記憶がある。
しかし今回触れるのはPファンクとは無関係、マーヴィン・ゲイです。この本は「Soul&Funk」な内容の為、Pファンク以外だとカーティス・メイフィールドJB、スタックス/ヴォルトの面々などが取り上げられており、マーヴィン・ゲイも取り上げられていたのだ。何を隠そう自分は相当マーヴィン好きでして今もよく聴いている。引越し時の優先度はクレイジーケンバンドと並んで最優先にした位。
マーヴィン・ゲイのアルバムで、世間的な評価が最も高いのは何と言っても1971年の「What's Going On」であろう。「Soul&Funk」にはマーヴィン・ゲイの生涯全アルバムの評論が掲載されており、この誌上ではヴォーカリストとして不動の地位を確立した60年代の諸作と70年代前半のサウンド・クリエイターというスタイルを確立した全盛期の評価が高いのだが、自分の最もお気に入りはこれらの『本筋』から少し外れた「Diana&Marvin」と、ソウルというよりブラコンの先駆的要素を持つ「I WANT YOU」の2作なのだ。2作一気に語れない為分割で今回は「Diana&Marvin」についての思いを。
さて「Soul&Funk」ではこのアルバムは彼の才能が最高潮に達した時期(1973年。「What's Going On」と、これまた有名な「Let's Get It On」の間の時期)のものであるにもかかわらずボロクソに酷評されている。理由は至って正当で

1:サウンド・クリエイターとして表現の自由を獲得していたのに、今回楽曲は全て会社(モータウン)側が準備したカラオケを使用

2:ダイアナ・ロスとのデュエット作であるのだが、実は両人別録りだったという驚愕の事実。

という脱力した制作過程を経たアルバムなのだが、自分としてはこれらの事実はどうでもいいくらい素晴らしいと感じるのは何と言ってもマーヴィン・ゲイにせよダイアナ・ロスにせよそのヴォーカル力は熟成の域に達した時期であるため変幻自在の唱法がスゴイということ。とても別録りとは思えない臨場感は酸いも甘いも噛み分けた両御大が見事に「諸事情を配慮した」結果であろう。
この時期のマーヴィン・ゲイのヴォーカルはホントに不世出だと思う。本誌の表現を借りると「甘いテナー、熱いシャウト、そしてこの時期に主役となったファルセット」と3種の唱法それぞれが一流の域に達しているのが凄い。要するに1人の中に3人の一流シンガーが同居していると言うべきで例えば当時のモータウンでファルセットヴォイスの第一人者といえばエディ・ケンドリックスであろうが、マーヴィンのファルセットはこれに引けをとらない位上手いと思うし、反面声量があるためシャウト唱法にしても迫力がある。実に何故マーヴィン・ゲイにハマっているのかという最大の理由がこの点なんです。だからいくらこのアルバムが凡作と評されようと自分的には「無人島に持っていくべきアルバム10枚」の上位に入る位イイのだ。現在のR&Bシンガーの歌唱法は昔の比でないくらい上手だし洗練・成熟されていると思うけど、マーヴィン・ゲイの存在が無ければ相当違う結果になっていたであろう。昔何気なく聞いていたラジオでドリカムの吉田美和が、自分のフェイバリットソングの1つに「ダイアナ&マーヴィンのたしか4曲目ぐらいにあった曲がすごく好き!」と言っていたのをいまだに憶えているが、当時ドリカムって殆ど興味なかったけどこの時以来ドリカム(吉田美和)への見方が変わりました。まあドリカムを聴いている訳ではないけども、テレビに出たらチェックくらいはしてます。話を戻すと、確かに4曲目は最高なんですよ。曲名は「You're A Special part Of Me」。自分のiPod shuffle にもバッチリ入れております。