どんな音楽聞いてるのか(シーズン1・その7)

nisi6hiroyuki2008-02-02

マーヴィン・ゲイの続き。
前回紹介した「Diana&Marvin」と同じくらい好きな「I Want You」について。
実は数年前まではマイフェバリット・マーヴィンは「What's Going On」だった。しかし30才過ぎて心境の変化なのか体質の変化(脂っこいものがあんまし食えなくなった、とか足のニオイが気になりだした、とか)の為自分の中で順位が入れ替わったのです。理由を脳内分析すると、まず世間一般の評価的に「What's Going On」は音楽性は非常に高いとされている。スティービー・ワンダーの「Talking Book」から始まる「怒涛の3部作」と共に、70年代初頭のいわゆる「ニュー・ソウル」と呼ばれるムーブメントのきっかけとなったアルバムであり、ラテン、ジャズ、ロック等様々な要素を取り入れた、それまでのR&Bの範疇で収まりきれない多様性と、さらに「What's Going On」では『Mercy Mercy Me(The Ecology)』『Save The Children』等、もう曲名からして判るように思想性を重視している点が画期的な作品なのだ。何でもマーヴィン・ゲイの弟はベトナム帰還兵で、弟の戦争体験談を聴いて衝撃を受けて作られたのが 、「What's Going On」なのである。多分マーヴィンは「アメリカよ、何やってんだ!(What's Going On)」という心の叫びがあったんでしょう。この時代、音楽界も間違いなくアメリカ映画界の「ニューシネマ・ムーブメント」と連動していたであろうし(それだけでなく、60年代の公民権運動とかサイケデリックとか様々な要素と絡んでいると思うが)この辺の学術的な部分を踏まえて聞いていたので自分の中で大きな存在だったのであろう。
前置きが長くなりすぎたが、とにかく30過ぎて体質の変化が起きて、「ムズカシイものよりとにかく聴いていて気持ちが良い音楽であればそれでイイではないか。」という老荘的悟り(という言葉の用法合ってるか自信ないが)のため、今は「I Want You」です。このアルバムは実はマーヴィン・ゲイの創作では無い。『美メロ大王』の異名をとるリオン・ウェアが自身のアルバムとして計画していた楽曲群ををマーヴィンが聴いて気に入り、ここからは久々に出る勝手な推測だが「リオンよ、お前、オレ様がこの業界でどんだけの地位にいるかワカってんだろうな。だからよ、今お前が作ってるアルバムかなりイケてるからそっくりオレにくんね?」というダークな経緯があってリリースされたアルバムなのである。但しマーヴィンも相当手を加えていて、前回取り上げた本「SOUL&FUNK」の表現を借りると「ステレオで聞くと右も左も上下もマーヴィン、百人くらいマーヴィンがいるんじゃないかと思わせる凄さ」な自己コーラスの多重録音、そして今作では3種のヴォーカル(テナー、シャウト、ファルセット)の変幻自在な使い分けはやや控え目なものの、逆にそれがリオン・ウェア作の美メロな楽曲とマッチして、聞いてる側からすると非常にスムースで聞き触りが良い。

あまりに好き過ぎてオリジナルアルバムCDに飽き足らず、「デラックス・エディション」という、お蔵入りの別テイク音源やらデモ版やらが入った2枚組仕様のヤツも買っちゃいまいた。