映画「シャーキーズマシーン」のこと

nisi6hiroyuki2008-02-10

70年代から80年代初めにかけて、「バート・レイノルズの時代」が確かに存在した。当時自分はヤマトだガンダムだと騒いでいた小学生のガキだったので、バート・レイノルズの映画は殆ど見たことが無かった。見たのはかろうじて「キャノンボール」くらいであろうか。でもバート・レイノルズがアメリカの映画スターであるという認識はあった。やはりあの独特な風貌(当時の印象:あんまり外人ぽくない顔で、ニヤけた笑顔がカッコいい口ヒゲのオジサン)がインパクト大だった。口ヒゲのハリウッドスターといえばまずは「風と共に去りぬ」のクラーク・ゲーブルであろう。カッコいい笑顔は共通項だが、ゲーブルのほうが全然「外人ぽい」顔をしている。また彼の全盛時代は1930〜40年代のハリウッド黄金時代であり、他にもキラ星の如くスター達がひしめき合っていた時代だった。何と言っても黄金時代のトップスターであるという強力なオーラがクラーク・ゲーブルには有る。スタジオ照明の設定なのかクラーク・ゲーブルの笑顔は目と歯がキラッと光る(マジで)んだよなあ。自分がバート・レイノルズを知った70年代後半は他に知ってるハリウッドスターはあとチャールズ・ブロンソンくらいで、むしろ映画スターとして高名なのはブルース・リーとかジャッキー・チェンの香港勢と、名前の覚えやすさでアラン・ドロン(たぶんドロンジョ様とリンクして記憶していたのだろう)つまりこの頃のハリウッドはあまり勢いがなくて、バート・レイノルズはよく見るとちょっと髪も薄くなりかかっているし、腹はやや出かかっている。笑顔の際はさすがに歯並びはキレイではあるが、目の感じはブライトさんのような白目が無い目(だから輝きも無い)なんです。クラーク・ゲーブルのような「100%完成された映画スター」という感覚は無く、良く言えば人間味豊かな、または自然体というのが彼の持ち味ということだろうか。
さて自分の小学生当時に話を戻すと、バート・レイノルズ主演映画で「トランザム7000」とか「グレートスタントマン」といった、物心ついた時にスーパーカーブームを経験した男子どもが食いつきそうな作品は知っていた。我々の感性的には「キャノンボール」もその延長線上の映画と位置づけられる。(もっと重要なのはジャッキー・チェンが出演しているという点だが)
そこで何故今「シャーキーズマシーン」なのか。理由は幾つかある。第1に、自分の中ではかねてより70年代アメリカ映画の再評価運動が盛んで、特に刑事モノは注目しているジャンルであり、「シャーキーズマシーン」は81年の作品ながら充分70年代の雰囲気を残していること。第2にオープニングの素晴らしさ。文章で説明しても伝わりにくいがあえて言うと、冒頭、この映画の舞台となるアトランタの市街中心部の高層ビル群の空撮からスタートし、カメラが段々町外れの地表に寄っていき、貨物線の廃線とおぼしき荒涼とした線路上を1人やや猫背気味に(冬の早朝で白い息を吐きながら)歩き続けるシャーキー刑事ことバート・レイノルズを捉える。ここで掛かる音楽がイイ。ランディ・クロフォードの「ストリート・ライフ」という曲。これはクエンティン・タランティーノ監督の「ジャッキー・ブラウン」(97年)のオープニングにもいい感じで使われた曲で「シャーキーズマシーン」では曲のイントロ前の独唱部分が入っていて、このバージョンの方がメリハリが付いていて良い。映画のオープニングシーンとしては自分の脳内順位では最高傑作だと思っている。もちろん映画全体も素晴らしいけど。映画自体のストーリーを追うのは長くなるので避けたいが、腕利きの刑事が業務上のミスで別部署に左遷されてしまうとか、仲間の刑事達が犯罪組織の復讐で次々と犠牲になるといった展開は後の「リーサル・ウェポン」シリーズに踏襲される元ネタであったり、あと忘れてはならないのがこの頃の刑事の服装が好きなんです。ツイード上着に中はボタンダウンのシャツ、下はジーンズというスタイルが当時のデカイ図体&平べったいシルエットのアメ車とマッチしていると感じるのは自分だけだろうか。そうそう長年この映画のタイトルを勘違いしていたのが、「シャーキーズマシーン」というのは何かそういうとてつもない車(マシーン)にバート・レイノルズが乗り込んで大暴れする映画なのかなーと、昔麻布シネマにあったビデオのパッケージをチラっと見た時思い込んでいて、今思えば明らかにトランザム7000シリーズとごっちゃな思い込みだった訳だが、実際は「シャーキーのマシーン」つまりシャーキー刑事と彼のチーム(マシーン)という意味だったのだ。
補足だが何故バート・レイノルズはあまり外人ぽくない顔なのかというと彼はネイティブ・アメリカンの血を引いているからそう見えるのかも知れない。しかし「シャーキーズマシーン」をじっくりと鑑賞した上での印象はむしろ「ジャワ原人」とか「クロマニョン人」とかの昔の人類の顔に近いような気がする