貴族!

「あーオレは貴族に生まれたかったなあ」と初めて思ったのはいつ頃だったか。恐らく高校生の時だったかなあ。と、書き始めると自分はなんだかちょっと頭のオカシイ人のように思えて来るが事実だから仕方が無い。
なぜか幼少の頃より歴史に興味があり、高校時代は中央公論の「日本の歴史」「世界の歴史」のシリーズを買い漁って読んでいたっけ。但し自分の中で好きな時代と関心のない時代がハッキリと区別されていて、特に好きな時代は18〜19世紀のヨーロッパ史と、日本だと平安後期から江戸時代まで(南北朝・室町を除く)だったか。
何故貴族になりたいのか?理由はたくさんあって、思い出すままに書き連ねてみましょう。
まず第一に「生活が楽しそう」ということ。(以下妄想)毎日遊びまくってオイシイもん食べて、綺麗な令嬢と結婚して、でも外(いくつか所有している自分の城のどれか)には、密かに目をつけた自分好みの美しい平民の娘を愛人として囲って。って当時はそっちの妄想は無かったかもしれないが、で、一応生活のメリハリってことでたまには戦に参加(もちろん若き有能な将軍として)して負け知らずという完全無欠の人生!イイですねえ。
それから貴族は肩書きがよい。いわゆる「公候伯子男」(こうこうはくしだん)つまり「公爵」とか「伯爵」とかの呼称がカッコいい。「リシュリュー公」とか「ネッセルローデ伯」とか呼ばれたいねえ。イギリスには「卿」という呼び方もあるけどあれはなんだろうか?「サー」や「ロード」の称号を受けた人がそう呼ばれるのか?この辺はちょっと不勉強でした。で、またスター・ウォーズの話になってしまうけど、ダース・ベイダーは「ベイダー卿」と呼ばれていたなあ。「ランド・カルリジアン男爵」「ドゥークー伯爵」なんてのも出てきたし、結構貴族趣味のある映画ですね。
第三のポイントは貴族は人名が平民とちょっと違っていて、「オレのほうがアッパークラスなんだよ」というのが即分かるのがなんとも羨ましい。フランスだと「シャルル・ド・ゴール」や「ユージェーヌ・ド・ボーアルネー」などの、名前と苗字の間にはいる「ド」。ドイツは「オットー・フォン・ビスマルク」の「フォン」。欧州はだいたいこの2系統に分かれていて、フランスと同じラテン系のスペインやイタリアは「ディ」「デ」となり、ドイツと近縁のオランダ、ベルギーでは「ヴァン」や「ファン」となる。画家の「ヴィンセント・ファン・ゴッホ」は貴族階級出身か?と思いきや、司馬遼太郎の「街道を行く・オランダ紀行」を読んでいたら、オランダでは普通の農民でもみんな勝手に「ファン」をつけちゃうのだそうで、ゴッホも平民の出なのだそうだ。司馬遼先生がいろんな著作で論じているのは日本とヨーロッパは封建制度の成り立ちが似ていて二者とも「中世」という時代を経験している点が中国や朝鮮と決定的に違うのだそうだ。ヨーロッパの貴族と日本の公家や武家との共通点は多い。そういえば日本でも強引に絡めれば「源頼朝」(みなもとのよりとも)や「藤原道長」(ふじわらのみちなが)の「の」が「フォン」などに対応するのか?家紋があるのも日本とヨーロッパだけらしい。
近世ヨーロッパで最も貴族が華やかだった時代はフランスのブルボン王朝・ルイ14世〜16世&マリー・アントワネットの時代のおよそ100年くらいでしょうか。しかし中央公論の「世界の歴史」その他の書籍を読んでいくと当時の貴族の生活は現代の視点で捉えるとキツイなあと思えるダークサイドが結構あることが分かってきて、いくつか例を挙げると、1:この頃の貴族は入浴の習慣が殆ど無く、従って体臭が相当キツかった。この為オーデコロンが発達したとのこと。2:ベルサイユ宮殿はトイレの数が少なかったので、ここに集う貴族達は広大な庭園のそこかしこで用を済ませていた。当時の貴婦人のスカートがデカイ鳥かごのような形状をしていたのはスカートを脱がずそのままの態勢で用を済ませることを考慮に入れたデザインなのだそうだ。3:太陽王ルイ14世は「万病の元は歯から来る」という医者のアドバイスを受けて、若いうちに全部の歯を抜いてしまった。この為以降食事は流動食のようなものしか食べれられず、腸の具合も悪くなって日に何十回もトイレに駆け込まざるを得なくなり、「間に合わなくなっちゃった」こともしばしばだった。などなど。
あとこの時代でどうしてもヤなのが「カツラ」。あの文化はどうしても理解不能です。しかも時代によって流行があるみたいでルイ14世時代は黒いロン毛パーマ風というのか、要は昔の桑名正博の髪型みたいなタイプが流行ってたみたい。ルイ15・16世時代は映画「アマデウス」の時代と重なるのであんな感じ。つまり分かりやすく説明すると浪速のモーツアルトことキダ・タロー先生の髪型のようなタイプというのか(余計分かりづらいか)そういえば「モンティ・パイソン」を見た時に思ったのだがイギリスの裁判官っていまだにこのタイプのカツラを着用して法廷に登場するけど、そういう規則があるのだろうか?(続く)