どんな音楽聞いてるか(シーズン2・その3)

今回ご紹介したいのは、JBが手掛けたサントラ盤。1970年代初めは映画界にもブラックパワーが注入された時期であった。有名な作品では「シャフト」、「スーパーフライ」などが挙げられる。監督、主演、音楽全て黒人による黒人の為の映画。だが資本は白人が握っている為「ブラックスプロイテーションムービー」と呼ばれ、内容はそこらの黒人のあんちゃん達が食い付きそうな娯楽作品ではあるが政治的思想的な要素は無いか薄められており、要は「こういう、アンタらの好きそうな映画を量産するからガンガン映画館に来て楽しんでくれや。でもしっかり金は頂きますぜ」という白人資本の搾取システムとなっているのだった。
それはともかくこれらブラックスプロイテーションムービーにおいて音楽を担当するのは当時一流の面々であった。「シャフト」=アイザック・ヘイズ、「スーパーフライ」=カーティス・メイフィールド、「トラブルマン」=マーヴィン・ゲイ等、そして御大JBもサントラを2枚出している。

「BLACK CAESAR」。ブラック・シーザー、・・・シーザーですか?なんか皇帝級のスゴい英雄伝のお話か?しかしジャケで見る限りは黒人ギャングの抗争レベルのようです(未見のため推測)。当時の黒人系で「クレオパトラなんとか」という映画もあったと思ったがとりあえずタイトルは威勢が良い。本題の音楽について。JBもバックバンドのJ.B’sも一番脂の乗っていた時期だけにサントラ盤としては良い出来ではなかろうか。カーティスの「スーパーフライ」の出来にはさすがに及ばないが、映画のシチュエーション的に使われるインスト曲にしてもJ.B’sが心を込めて演奏しているので気持ちよく聴ける。自分的におススメ曲は1曲目の「DOWN AND OUT IN NEW YORK CITY」、これは70年代JB屈指の熱唱です!ゲロッパ的なファンク乗りとは違うがミドルテンポな曲調の、イントロもそこそこにのっけから怒鳴るように歌い出し、5分近い曲のほぼ全編全力で歌い続ける圧倒的な1曲。それから5曲目の「THE BOSS」は逆にクールでカッコいい。JB特有のハードなファンクではないが「静かな中の熱さ」を感じさせる。
次、

「SLAUGHTER’S BIGRIP−OFF」
昔12チャンでたまにやっていた「スローター・怒りの銃弾」という確かジム・ブラウン主演のB級黒人映画の続編と思われる。もちろん未見であるがジャケを見ると完全にJB主演と勘違いする。マシンガンをブッ放すJBは撃ってる方向と視線の方向が全然違う!しかも銃弾の代わりに飛び出すのはゴールドディスクという、映画本編との無関係ぶりは素晴らし過ぎです。曲で気になるのはまず4曲目「HAPPY FOR THE POOR」、これは曲名こそ違えどJ.B’sの名曲「GIMME SOME MORE」と同じ。但し別テイクで、サントラ版の方が荒削りな感じに聞こえる。1曲目「SLAUGHTER THEME」は曲調がクレイジーケンバンドの「ヨコスカンショック」という曲に良く似ており、元ネタ臭が濃厚だ。
JBと関係ない話だが、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」はワーナー・ブラザース製作・配給という彼にとって生涯唯一のハリウッドメジャー作品だが、実際の戦略方針としては「準ブラックスプロイテーションムービー」的な扱いのB級作品だったようだ。その視点で考えると準主役に黒人の空手の達人(ジム・ケリー)が出てくるのはやはり黒人層も取り込もうとした意図が見え見えではあった。ジム・ケリーカッコいいですけどね。(JBの回・続く)