どんな音楽聞いてるか(シーズン2・その6)

nisi6hiroyuki2008-11-17

今回でJBはひと区切り。前回まではどの曲が良いとかの話を勝手な推論や勝手な表現を交えつつで終始していたのだが、今回は「勝手な推測」抜きで真面目ぎみに行きます。
前回取り上げた「IT’S A NEW DAY」。この曲の聴きどころは、繰り返すようだが「ファンキー・ソウルの集大成」。具体的に言うと演奏にメロディ・ラインが皆無でギターからサックスからコーラスから全てリズムを刻む為だけに用いられており、これに本来のリズムセクションのドラムス、ベース、パーカッション(コンガ)が粘着質的に混ざり合い、JBならではのグルーブ感を高濃度で堪能出来るのと、JB自身、この曲に関しては非常に明朗快活に伸び伸びと歌っており、ディープな曲の多いJBとしては、珍しく爽快な印象を感じる曲なのだ。
と、偉そうに評論めいてしまったが、実際の所自分は楽器が出来るわけでもなく音楽技術に関して皆目わからず、ただ曲を聴いていての印象のみで語っております。それでも更に話を続けたい。「IT’S A NEW DAY」で最も気になるのがドラム。非常に複雑なリズムを刻んでいて、どうドラムを叩いたらこうなるのか想像を絶する。元来ファンクのリズムは16ビートの細かい刻みだが、「IT’S A NEW DAY」の場合さらに踏み込んで、単にリズムを刻むだけで終わっていない、うまく言えないが本来規則性を求められるドラミングに更に創造性を上乗せしたような凄さを感じる。この曲の録音メンバーをアルバムのブックレットで見るとドラムは『クライド・スタブルフィールドもしくはメルビン・パーカー』とある。メルビン・パーカーは、メイシオ・パーカーの弟でJBの初期ファンキー・ソウル期を支えた名ドラマーだそうである。しかし「IT’S A NEW DAY」ではクライド・スタブルフィールド説を採りたい。
JB全盛期の60年代末期から70年代前期にかけて、彼の陣営にはドラマーは何人かいたようだが、特に有名なのは「ジャボとクライド」。「ボニー&クライド」じゃないです。ジョン‘ジャボ’スタークスとクライド・スタブルフィールドのJB史上双璧ドラマーである。ジャボはどちらかと言うと耐久性があって教科書的な、ファンクのリズムを延々忠実に刻んでいってその規則性が聴く側を徐々にグルーブに浸らせる感じなのに対して、クライドのほうは演奏の自由度が高い、天才肌としか言いようの無いドラマーであり、何気なくJBの曲を聴いていてもドラムスだけが際立ってくるというタイプで、モータウンのジェイムズ・ジェマーソンのベースと同じ性質を感じさせる。
「IT’S A NEW DAY」の場合コンガの音がけっこう入り込んでいるのでドラムのみを意識集中して楽しめないのだが、クライド・スタブルフィールドの凄さを堪能できる1曲としては「I GOT THE FEELIN’」(1968)。この曲はJBのファンキー・ソウルとしては指折りの名曲とされているが、主役はJBのシャウトでもジミー・ノーランのギターでもメイシオ・パーカーのサックスでもない、まぎれもなくクライドのドラムである。聴いていて信じられないがドラムだけで主旋律を演奏しているのではと思わずにはいられない。尺は2分33秒と短いがこの曲のドラミングを聴いているだけでご飯3杯じゃなくて酒3杯イケる。