ゴヤ展

2ヶ月振りの書き込み。しかも1週間前の出来事を記すというのも何だか・・・。
1/8(日)上野、国立西洋美術館で開催されている「ゴヤ展」に行ってきました。
絵画にはほとんど興味も知識の無いけれど、このフランシスコ・デ・ゴヤという18世紀後半から19世紀初期に活躍したスペインを代表する世界的な画家の作品は昔から見てみたいと思っていた。
結局、その関心の源は歴史への知的欲求から来ており、特に「カルロス4世の家族」という絵はとても興味深い。普通、近代西洋における王侯貴族の肖像画は、リアリティを出しつつも実物よりもやや美化して描かれるのが通例なのだが、スペイン宮廷主席画家ゴヤの描く国王カルロス4世は、虚ろな眼差しで愚鈍な性格がその表情からも察せられる太った初老男といった感じ。一方マリア・ルイーサ王妃は高慢かつ悪賢そうな顔立ちで、よくもまあ王家に雇われている身分なのにここまで辛辣に描けるなあと思わせる作品で、しかも絵全体の雰囲気が暗くてきらびやかさのカケラも無く、同時代のパリやウィーンと違って、所詮スペイン宮廷はヨーロッパでは田舎に過ぎないという印象がある。
とまあ念願の「カルロス4世の家族」実物がついに拝めると、普段縁のない美術館(それも国立の)に足を運んだのだが、何とこの絵は来日していなかった。
他にもゴヤの作品で見たかった、「1808年5月3日プリンシペ・ピオの丘での虐殺」(マドリードに侵攻したナポレオンのフランス軍による、無抵抗の市民を銃殺する場面を描いた作品)や「平和公マヌエル・デ・ゴドイ」(ゴドイ公はナポレオン戦争時代のスペイン宰相。実は王妃の愛人で、美男の誉れが高かった。他の画家が描いたゴドイはいかにも女たらし的な男前な顔立ちで、一方ゴヤが描くゴドイは悪辣な権力者といった風貌である)も展示されておらず、自分的には「一体何をしに来たのか」状態だったが、事前に展示作品をチェックしなかったのが悪いので仕方が無い。
展示のメインは、ゴヤの絵といえばまずこれだろうという「着衣のマハ」。これまた残念な事にこの作品と対をなす「裸のマハ」も来日せず。展示スペースの大半を占めていたのが「ロス・カプリーチョス」という版画作品集の素描関連で、ゴヤが長年に渡って書き溜めていたスケッチ群である為、ゴヤの内面を知るのには第一級の資料なのだろう。あまり興味は無かったのだが、折角の機会なので全点見て回った。
世界的な画家の展示ということで、会場はかなり混雑しており、結局一通り見学するのに2時間以上かかったが、入場料¥1500はとても安いと思う。お目当ての作品が無いとかケチをつけておいて何だが、「着衣のマハ」だけでも見る価値は非常に高い。


上野界隈ではゴヤ展ののぼりがそこらじゅうに掲げられており、国立西洋美術館の、このイベントに対する力の入れようを感じられる。
今回はちょっとアカデミックな内容でした。