レッド・クリフ(赤壁の戦い)

今回は三国志の話で。
相変わらず遅すぎる報告なのだが、1月に日曜洋画劇場で「レッド・クリフ」パート1,2が2週連続で放映された。その感想を。
「レッド・クリフ」は三国志の、数ある戦いの中でも、三国志ファンの中で恐らく最も人気の高い「赤壁の戦い」を描いている。
三国志というのは黄巾の乱から、司馬炎による三国統一まで100年近くある長い物語であるが、「三国志」の三国の主、劉備曹操孫権が一同に会した戦いは「赤壁」のみだし、諸葛孔明のデビュー戦も「赤壁」、そしてこれも三国志ファン人気の高い呉の武将、周瑜の一世一代の作戦指揮(連環の計、苦肉の策、火計など)によって、曹操の100万の軍勢を打ち破るというカタルシス。(まあ実際は曹操軍が10万、対する孫権劉備連合軍が3万くらいだったらしいけど)もあり、確かに長い三国志のストーリーのなかでひとつのクライマックスであろう。
「レッド・クリフ」はパート1でまず曹操軍に追われる放浪の劉備軍のシーンから始まる。ということは、これも超有名なエピソード、敗走する劉備軍の中、劉備の夫人と息子を救出すべくただ一騎で駆け戻る趙雲。充満する曹操軍のまっ只中、敵兵を自慢の槍で突き伏せ突き上げ突き倒し、息子の阿斗を見事救い出す場面や、その後を、時間を稼ぐため引き継いだ張飛が敵の1万の軍勢をたった1騎で退けたというこれまた超有名な「長坂の戦い」という赤壁の前哨戦から始まる。まあこのエピソードがないと劉備陣営はあまり見せ場が無いという事もある。
曹操にさんざんに打ち負かされた劉備が頼ったのが江南の地を治める孫権だった。

この映画での劉備のルックスは、土建会社の社長みたいな、ちょっと苦労人的なオジサンで、意外と劉備のキャラクターに合っている気がする。劉備自慢の部将、関羽張飛趙雲は、ほぼイメージ通りの見た目&強さだが、「赤壁の戦い」では端役なので、出番は少ない。「レッド・クリフ」に於ける主役はトニー・レオン演じる呉の大都督(総司令官)周瑜と、まだ蜀の国を興す前の流浪の軍閥であった劉備の軍師、諸葛亮金城武)と、圧倒的な国力を背景に大軍で呉に侵攻する、魏の曹操(役者の名前わからん)。
曹操は、日本の俳優で例えると北大路欣也のような、老練で知的な雰囲気があって、これも曹操のイメージに近い。呉の君主、孫権も、史実どおり赤壁当時はまだ家督を継いだばかりで若く、兄孫策の親友だった周瑜に兄事する態度も良く描かれているが、ルックス的には「紅毛碧眼」と呼ばれ、多分西洋人みたいな風貌だったと思われる孫権像とは違っていた。
諸葛亮孔明を、金城武が演じるというのが不安材料(世の三国志ファンもそう思った人多いのでは?)だったが、蓋を開けてみると意外にもヨイ。若き日の孔明の、飄々としつつちょっと小賢しい感じが良く出ている。「三国志演義」では孔明の知略が周瑜を大きく凌駕していて、周瑜ファンには残念な展開となっているのだが、史実では「赤壁の戦い」の主役はあくまで周瑜。映画「レッド・クリフ」でもそのポイントは外さず、しかし孔明の見せ場も充分設定していてバランスがよかった。
むしろ問題ありはトニー・レオン演じる周瑜だったか?世間一般の「周瑜イメージ」はゲームとかの影響もあると思うのだが、色白の草食系イケメン的なルックスでありつつも、武技にも長け、もちろん知略は超一流という感じなのだが、トニー・レオン、確かに天下の二枚目スターではあるけれどもういい歳になってるので、頬肉がたるみ気味&肌の質感も中年入ってるから、「もはや周瑜役はキツイよね」というのが正直な感想。それと周瑜のキャラクターってちょっとシャアみたいな、自信過剰でキザな一面もあると思うけど、トニー・レオン周瑜はあくまで誠実な司令官に徹していて、役者としては金城孔明に相当喰われてしまっている気がする。(続く)