グッバイ、レーニン!

nisi6hiroyuki2011-05-07

また映画の話。
グッバイ、レーニン!」は2003年のドイツ映画。ドイツ映画というと、やはり自分の趣味的には「Uボート」とか「ヒトラー最期の12日間」といったリアリティー溢れる戦争映画と、あとはヴィム・ベンダース監督作品くらいしか観てなくて、あまり語れないが、この作品については公開当時から気になっていて、1年程前ようやくレンタルで借りて観たのと、その後ノベライズ本も読んだ。
ストーリーには触れないが、この映画の舞台は1989,90年頃の東ベルリン。つまり歴史的出来事である東欧革命の年です。社会主義国東ドイツ体制崩壊して、ベルリンの壁も取り壊され、西ドイツに吸収合併される形で東西ドイツが統一される時期の東ベルリン市民のある一家が主人公で・・・、というとなんかシリアスなドキュメンタリータッチの作品かと思ってしまうがさにあらず、若干のコメディ要素を持ちつつ、良く出来たストーリー展開のヒューマンドラマで、こういう映画はヨーロッパ映画ならではの良品だと思う。この手の作品をハリウッドでやろうとするとどこか教訓的な意味を持たせようとしてつまらなくなったり、日本映画の場合はムリヤリ感動方面に持っていこうとしてウエットな展開になったりしてイヤなのだが、「グッバイ・レーニン!」はそういう押し付けが一切無く、主人公達は激動の時代にモロ巻き込まれているにも関わらず意外と淡々として、でも実際はすさまじい社会情勢の変化に適用しようとしている姿もちゃんと描写している。
何故1年前にTSUTAYAで借りて観た映画の事に触れたくなったのかというと、この映画の裏テーマといえる、旧東ドイツ時代の人々の暮らしぶりが、意外とバランス良かったんじゃない?という事を最近よく考えるからだった。
確かに当時の西側資本主義国家と比較して言論の自由はないし、シュタージ(国家保安警察)というコワイ連中もいるし、経済的にも格段の差がある。そういう不満が東欧革命の原動力になったんだろうが、いざ西側の資本主義に取り込まれてみると結構辛い事も多い。
この映画の重要な小道具になっている「シュプレーヴァルト・ピクルス」とか「モカフィックス・ゴールド(インスタントコーヒー)」といった食料品や「トラバント」(東ドイツ国産車)といった東ドイツの国産製品が色々登場する。まあ1989年といったら日本はバブル絶頂期で、国民は物質的には超恵まれた生活を送っていたけれど、東ドイツの人々は、慎ましやかながらも自国製品で充実した生活をしていたし、要はスローライフなんだね。「グッバイ・レーニン!」公開当時の2003年よりも現在のほうが更に意義深く感じる映画だと思う。
自分的に押さえておきたいポイントは主人公のアレックスが乗っている東ドイツ製のスクーター。車種名はわからないけれどこれがカッコいいんだ。オレンジ色の車体が東側の工業製品らしくないPOPな感じで、マジ欲しい。でも当然手に入らない。今自分が乗っているのがTODAYというホンダの一番安いスクーター(車体色はイエロー)なんだけど、なんとなくデザインが似てなくも無いので、脳内妄想的にはアレックスのスクーターの代用品です。
ちなみに主人公のアレックスを演じた俳優はダニエル・ブリュールという人で、タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」にも登場するのだが、この映画の話はまた改めて。