WW2戦車ヲタ限定の映画「フューリー」

数年前に近所のTSUTAYAに入会したっきり全然利用していなかったのだがケータイ機種更新に伴いTポイントカードを新しくしたのを機に再入会した。
で、まず借りたのが「インターステラ―」。生まれて初めて劇場で観た映画が「未知との遭遇」、初めて劇場で観たアニメ映画が「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」だもんで、こういうハード過ぎないエンタメ宇宙SFは好きですね。
そして次に借りたのが「フューリー」です。映画のジャンルでは『戦争アクション物』も大好物ゆえではあるが、この「フューリー」は映画史上初の偉業を成し遂げているのです。
それはタイガー戦車の『実車』が登場!しかも動いているという偉業!
この辺の話はWW2ミリタリー好きでないとわかりづらいのだが、例えば「プライベートライアン」みたく過去どれほどリアルな考証を施した戦争映画でもタイガー戦車に関しては旧ソ連のT34を改造したりして誤魔化すしかなかったのだ。敗戦国ドイツの戦車はほとんど現存していないのだから仕方がない。
さて、以降「タイガー」をヲタっぽく「ティーガー」と表記しますが、この映画「フューリー」は、イギリスのボービントン戦車博物館に唯一可動状態で保管されているティーガーI型を借り出して撮影しているのです。ただ劇中では「ティーガーVSシャーマン」の戦闘シークエンスはさほど重要ではなくて、とりあえずマニアを満足させとけみたいな数分間でした。
では「フューリー」の見所は何か?簡単に言えば「小林源文の作品テイストを完全実写化」したという点ですかね。もちろんデヴィッド・エアー監督は小林源文先生を知らないと思いますが、この映画は奇しくもハードかつグロテスクな戦車の戦闘を描写し続けた小林源文の作品群を忠実に再現しているのです。ただ小林源文独軍側を主人公にした作品が大半なので、米軍のシャーマン戦車を主役にしている「フューリー」とは視点が違うが、「フューリー」は「プライベートライアン」級に独軍の軍装、兵装はリアルに再現しているのでベリーグッドです。
話を「ティーガー戦車」に戻すと、本作で使用されているボービントンの実車は、北アフリカ戦線で捕獲された初期型で、「フューリー」の舞台となっている大戦末期1945年4月だと、独軍重戦車大隊に於いては「ティーガーII型」つまり「キングタイガー」にほぼ更新されている為、ティーガーIの初期型、しかも単色塗装というのは考えにくいシチュエーションではある。無理にこじつけて考えるならば、大戦末期ドイツでは戦車訓練学校で教習車両として使われていたティーガーI初期型を引っ張り出して実戦配備した記録もあるので、まあこれはそういう事なのかなと自己納得しました。

「フューリー」に登場する初期型ティーガーIに敬意を表し、昔集めた海洋堂ワールドタンクミュージアムのコレクションから。

ともあれ「フューリー」はタイトルにある通りWW2戦車ヲタにとっては昇天モノの映画なのだが、ストーリー的にこじんまりとした話にならざるを得ない為、内容の濃厚さに反比例してカタルシスというかケレン味に欠ける印象ではあった。乗員にとって戦車は正に「我が家」であり、その狭い車内空間に生活している感じは、70年以上昔の「サハラ戦車隊」を連想した。(この映画、ハンフリー・ボガートが戦車長役!で主演)あと、大戦末期でドイツ国内の奥深くまで戦場になっている感じは「レマゲン鉄橋」を思い起こすし、様々な過去の戦争映画のエッセンスが詰まっているように感じたが、やはり監督のデヴィッド・エアーという人のドライな男性的感覚が「小林源文的」な感覚と一致しているのでしょうかね。デヴィッド・エアー監督作では以前GYAOで「エンド・オブ・ウォッチ」という警察モノを観てこれも良かったです。